作り手インタビュー Interview

作り手雪路

ひとひとりぶんの雪を踏む

「いよいよだなぁ」

低気圧と緊張感のピリピリとした街の声が聴こえる冬……と思いきや、あれ???

今年の秋田は本当に雪が少なかった。本来なら早起きして雪掻きをし、幾度どなく起こる田んぼの地吹雪をみては、ここはディストピアかな?そんな北東北は秋田。

車が雪でハマると見ず知らずの人や町内の苦手な人でさえも無言で車を押し無言で去る。

どんな立場や背景をも超え、少しばかり同じ感覚と意識が繋がるのが目に見えてわかる。

それが真冬に「はだしのこころ」をやろうと思った理由の一つです。

私たちはそんな街に住んでいる。

かまし かまされ ただそれだけ

僕はたぶん、立場も背景もアートも美術もストリートもそんなカテゴライズやシステムから解放され、動物のように身体向く方へはだしであるく人と事が好きだなんだと思う。

皆で機材を貸し合って、昼間の仕事終わってから眠い目を擦り 絵を描き 言葉を紡ぎ 音を奏で 踊り 踊らされ かまし かまされ またかます、、ただそれだけ。

小さな街で互いにフックアップしてきた分、後から文化が積み重なっている。そんな気がします。

そんな人達にどんな傷やペイン(痛み)があるかなんてほとんど知らないし、たまに会ってもそんな湿っぽい話などない。ジメットしているのは僕ぐらい?? 

大音量の音楽とグータッチと笑顔、そのうち振る舞われるテキーラ。たまにしか顔は出さないけど、居場所をつくってる人を見るとグッと熱くなり街も厚くなる。

ー 傷やペインがあるかどうかも知らないのに「はだしのスクラッチ」になぜ出展してもらったか?

リリック(叙情詩)を手書きするMORI from 3KW

彼らが放つ詩や短歌、叙情詩や音の中には受けた排除や差別、傷や痛みがときより潜んでるように感じるし、いまの僕の傷に触れる感覚もある。

それは直接的な音や言葉ではなく、ただただ彼らの作品と感覚の波形が重なる瞬間があるだけの話。

佐藤元氣が辿ってきた気圧の低い短歌を詠み、それらをタバコを吸わないフジワラマリが一服するかのように朗読をする。

黒井円盤が吹雪と晴れ間を繰り返す285号線のように緊張感ある繊細なスクラッチを奏で、JWLが石をひたすら削る石彫家のような音を出す。

菅原あすかとnostが黒鍵経由の灰色音を鳴らしては、まだ見つけられていない雪深い土地の奇祭かのようにのた打ち回りながらカタルシスを迎えるMORI from 3KWのリリック。

雪路

僕はこのMORI from 3KWのリリックを聴いた時、厳しい冬のあの景色の中で過ごす誰かと誰かと誰かのスクラッチ(傷)が直感的に奏でられた感覚を得ました。

昨年の夏も似たようなことがありました。

全国から見ず知らずの人が「私も被災したことがあって、、」と家の復旧作業を手伝ってくれて、こんなにもダイレクトに感覚が繋がり全く知らない人に助けられた事もはじめてだったし、一生分の感謝も言いたい。

似た様な傷というものは、こんなにも感覚に近づく事があるんだなと、、

今は誰かの傷と自分の傷が触れるところへ、なるべく肉体を使って、

「ライブ オン ダイレクト ケア」

そうやって誰かのスクラッチと向き合っていたい。

皆どれくらいの傷を持っている?皆どうやって傷を癒してる?皆どうやって傷と共に生きている?

あの器やガラス、彫刻や絵、踊りや短歌、叙情詩や音もスクラッチの中から生まれていたのかな?

なんて思ったり思わなかったり、、

第8回「はだしのこころ」の企画展 感覚の対話「はだしのスクラッチ」秋田に住む七名による感覚の対話から「雪路」という作品がうまれました。 

どうやら雪はいらないのかもしれないけど、いるのかもしれない

どっちよ、、

第8回 はだしのこころ
感覚の対話「はだしのスクラッチ」 雪路について

文章 |nost / 雪路
音響 |あそこ 爆音小僧寿し KoNG
映像 |UB 白田 早坂 田中 / 記録映像



作り手雪路

ゆきじ

                                                                                    MORI from 3KW(リリック) 佐藤元氣(短歌) 黒井円盤(スクラッチ) JWL(スクラッチ) 菅原あすか(クラリネット) フジワラマリ(朗読) nost(シンセ)             

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